Q 現在、お店に置いているワインの数は?
グラスワインを常時20種類前後、ボトルワインを約150種類ご用意しています。グラスワインはフランスやイタリアだけでなく、世界各国のさまざまな産地から幅広く選び、味わいのバランスにも配慮しています。ワイン初心者の方から愛好家の方まで、それぞれの好みに合わせて楽しんでいただけるラインナップを心掛けています。
また、日本ワインも常時4種類以上取り揃えており、宵味にとって欠かせない重要なカテゴリーの一つです。海外ワインと同じ目線でご紹介し、日本ワインならではの魅力を多くの方に知っていただきたいと考えています。
さらに、ブルゴーニュをはじめとする高級ワインもグラスでご用意しています。通常はボトルでしか味わえないようなワインもグラスで提供しており、「いつか飲んでみたい」と思っていた憧れのワインを気軽にお楽しみいただけます。
ボトルワインはブルゴーニュを中心に構成していますが、ブルゴーニュ専門店ではありません。世界中の秀逸なワインを幅広く揃え、有名な産地だけでなく、個性あふれる面白い産地のワインも積極的に取り扱っています。お客様の好みに応じて選んでいただける、多様性のあるラインナップを大切にしています。
私たちが大事にしているのは、高級なワインを並べることではありません。価格以上の価値を感じていただけることを重視し、できるだけ手の届きやすい価格で提供したいと考えています。そして、お客様に新しい発見をお届けできるワインリストを目指しています。
Q ワイン選びで重視していることは?
私がワインを選ぶときにずっと大切にしている軸は、大きく3つあります。
■ 1.「ボトルの中身」だけが品質じゃないと思っている
「いいワイン」と聞くと、高価なものや有名な銘柄を思い浮かべる方が多いかもしれません。注いだ瞬間の華やかな香りや、口に含んだときのバランス、心地よい余韻。もちろんそれらも素晴らしいですし、ワインそのものの完成度は大前提として大切にしています。
でも、私が思う品質は、ボトルの中身だけでは完結しないんですよね。どんなに素晴らしいワインでも、冷やしすぎたり、合わないグラスで出したりすると、その魅力が半減してしまう。それはとても勿体ないなと思ってしまうんです。
ワイン本来のポテンシャルを見極めて、一番いい顔をしてくれる温度とグラスを選ぶ。そして、心から寛げる空間でお出しする。一番美味しい状態で楽しんでいただける環境をつくることまで含めて、初めて自分が納得できる品質になるのかな、と考えています。
■ 2.「この場所で飲めて嬉しかったな」と思える価格を探す
正直、ワインの値付けはいつもすごく悩みます(笑)。一律で「原価率〇〇%」と機械的に決められれば楽なのかもしれませんが、ワインは一本一本、背景がまったく違うんですよね。市場での珍しさ、熟成の深み、生産者さんの想いや将来性。だから、高すぎて手が届かないものにはしたくないし、かといってワインの価値を無視した安売りもしたくないんです。
ワインを飲み終えて、お店を出るときに、「この空間で、この体験ができて、この価格ならすごく嬉しいな」と、心から納得してもらえること。価格だけが一人歩きせず、価値の押し付けにもならない。「ちょうどよくて、心地いい」着地点を、いつも探りながら追求しています。
■ 3. 美味しかったの先にある、記憶に残る体験を届けたい
わざわざお店に足を運んでいただくからには、「ここだから出会えた」という体験を持ち帰ってほしいなと思うんです。だからセラーには、どこでも飲める定番だけでなく、ちょっとした出会いを忍ばせるようにしています。
手に入らないようなカルトワインという意味ではありません。あまり知られていないけれど情熱あふれる地域のワイン、ワクワクするような面白い品種、そして造り手の顔が見える大好きな日本ワイン。私は、ワインをただの「美味しい飲み物」として終わらせたくないんです。
「なんでこのワインを選んだのか」「どんな場所で、どんな人が作っているのか」。グラスを傾けながら、そんな背景にあるストーリーや土地の風景まで、会話を通して一緒にお届けできたら最高だなと思っています。
長々と語ってしまいましたが、これらはあくまで「私自身がこうでありたい」と考えているワインへの向き合い方です。私が目指しているのは、その場の美味しさだけではありません。「あの夜、宵味で飲んだワイン、美味しかったな」「なんだか新しいワインの楽しさを知れたな」。そんな風に、誰かの記憶にそっと残るような時間をつくること。美味しいお食事や自慢のクレープと一緒に、そんな特別なひとときを過ごしていただけたら本当に嬉しいです。
今夜もふらっと、美味しい一杯を飲みに来てくださいね。
Q 宵味独自のこだわりはありますか?
この問いに対して、私たちが一番お伝えしたい答え。それは、「こだわりすぎないこと」が、宵味の一番のこだわりです。
■ ワインに「正解」も「押し付け」もいらない
ワインは本来、自由に楽しむ嗜好品です。「このワインが最高峰だ」「こう味わうのが正解だ」といった絶対的な答えは、どこにもありません。好みは人それぞれ違って当たり前ですし、ソムリエや専門家の評価がすべてでもありません。同じ一杯であっても、その日の体調や気分、一緒にいる人によって感じ方は変わるものだからです。
だからこそ宵味では、「これが素晴らしいワインです」「こう飲まなければいけません」という価値観をお客様に押し付けるようなことはしたくありません。私たちが何より大切にしたいのは、専門家の意見ではなく、「お客様が今、飲みたいもの」「お客様が美味しいと感じるもの」です。
■ 小さなお店だからこそできる、一人ひとりとの対話
私たちは小さな店舗です。大手のワインバーのように何百本もの在庫を常時揃えているわけではありません。すべてのリクエストに完璧にお応えできない歯がゆさもあります。
ですが、小さな店だからこその強みがあります。お客様一人ひとりとじっくり会話ができること。その日の気分や、好きな味わいを丁寧に伺えること。「前回はあちらの赤がお好きでしたね」と、お客様の好みを覚えていられること。
メニューに載っているリストだけがすべてではありません。固定観念にとらわれず、「今日はこんな気分かな」という対話の中から、メニューにないおすすめの一本をご提案することもあります。マニュアル通りの接客ではなく、目の前にいるお客様との対話を大切にしたいと考えています。
■ お店のルールではなく、あなたに合わせた心地よさを
お一人で静かにワインを楽しみたい方、大切な方と会話を楽しみたい方、ワインの知識を深めたい方、まだワインのことがよく分からない初心者の方。宵味に集まるお客様の過ごし方は様々です。
お店のルールにお客様を合わせてもらうのではなく、「お客様の過ごし方に合わせて、お店がほんの少し形を変える」。そんな柔軟で温かいお店でありたいと思っています。
宵味には、ワインの選び方やサービスに対する独自の考え方や美学があります。けれど、ワインの価値観や楽しみ方を押し付けるつもりは一切ありません。私たちが一番大切にしているのは、「あなたにとって、今日という夜が心地よい時間になること」です。知識がなくても、うまく言葉で好みを伝えられなくても大丈夫です。「今日はこんな気分」と、ぜひ気軽にお話ししてくださいね。
Q ボトルワインとグラスワインで選び方は違いますか?
結論からお伝えすると、品質や価値、体験性を大切にするという根本の考え方は同じです。けれど、ボトルとグラスでは、お客様に届けたい体験のカタチが少し違います。
■ ボトルワインは、時間を共有するための「長編映画」
ボトルワインを選ぶとき、私たちは単に味が美味しいかどうかだけでは決めていません。誰と飲むのか。どんな場面で、なぜその一本を開けるのか。
一本のワインを飲み切るまでには、ゆったりとした時間が流れます。テーブルを挟んだ会話があり、美味しい食事があり、その場の空気感がある。そうした、共に過ごす時間そのものを含めて、ボトルワインの価値だと考えています。だからこそ、生産者の背景や土地の個性、ヴィンテージだけでなく、「今夜、このワインを開ける理由がそこにあるか」を大切にしています。
映画に例えるなら、ボトルワインは「長編映画」のようなものです。2時間かけてじっくり観る価値があるか。飲み終わったあとに、心に温かいものが残るか。一冊の物語をめくるように、移り変わる味わいと時間を楽しんでいただくために選んでいます。
■ グラスワインは新しい発見を楽しむ「短編映画」
一方で、グラスワインはもっと自由で、気軽で、遊び心があって良いと考えています。ボトルに比べると、まだあまり知られていないマイナーな産地や、面白いブドウ品種、個性が光る生産者のワインも積極的にラインナップに取り入れています。
グラスワインが担う大切な役割、それは「新しいワインとの出会い」です。必ずしも、自分の好みのど真ん中である必要はありません。たとえ自分の好みとは少し違ったとしても、「こんな味わいのワインもあるんだ」「この品種、面白いね」という新しい発見や驚きがあること自体に、大きな価値があると思っています。
映画に例えるなら、グラスワインは「短編映画」です。1杯で軽やかに完結し、気軽に楽しめて、思いがけない感動がある。「ちょっと冒険してみようかな」という気分にそっと寄り添うように選んでいます。
